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東芝のオピニオンショッピングと倒産

監査法人の変更を検討


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東芝は2017年4月11日、監査法人の適正意見のないまま第3四半期の決算を発表した。通常、四半期の報告書は東芝も当初は2月14日に提出するはずであったが、内部通報があったとして1か月提出を延期。その後再延期をしたが、意見が得られないまま期限を迎えた。さらなる延期の申請をせずに四半期報告書の提出期限が守られなければ上場廃止となる。信頼も失墜し、倒産のリスクも出てきてしまう。結果として意見不表明という異例の事態での決算発表となった。


一般的にニュースになっているのは、東芝監査法人であるあらた有限責任監査法人が意見不表明とした、という結果としてのものが多い。しかし、内情はもっと複雑であり、また、日本の監査の制度や会社の風土が複雑に絡んでいる。




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日本と米国における異なる風土、東芝倒産への考え


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監査意見に関する一連の発端は、東芝の子会社であるウエスチングハウスからの内部通報にある。ウエスチングハウスの経営幹部が部下に費用を小さく見せるよう迫り、不適切な圧力をかけたとされる。親会社の東芝は外部の弁護士などにも依頼し、決算への影響額、他に同様の事例がないかの調査などを適切に行い、あらた監査法人もその結果については基本的には受け入れている。しかしながら、子会社ウエスチングハウスの監査法人が承認をせず、調整ができなかったことにより監査意見が出せなかったのである。


ここからはあまりニュースで取り上げられていないが、会計監査において、グループ会社の場合には、親会社の監査人は子会社の監査の全てを行っているわけではない。もちろん、親会社と子会社の監査法人が一致している場合もあれば、親会社監査人が直接子会社の監査も行っている場合もある。


しかし、子会社の規模自体が大きく、監査が必要である場合に、日本の監査法人が海外展開をして、子会社の監査まですべて行うことは現実的ではない。東芝の2016年3月期の子会社数は552社である。


実際に行われている方法は、親会社の監査人は、子会社の監査人に監査の指示書を出し、子会社の監査人は、子会社の監査を行うと同時に、親会社監査人へ監査の報告書を出す。そして親会社監査人はその結果をもとに連結監査を行う。このような仕組みになっているため、今回の東芝のように子会社監査人が意見を出さないにも関わらず、親会社の監査人が適正意見を出すことは考えられないのである。


ここで日本の監査についての考え方や、会社の風土、そして海外での考え方の違いが浮き彫りになる。そもそも、会計監査は海外で生まれた制度である。特に、アメリカにおいては、人類のるつぼの名の通り、価値観、ルーツ、基準などがバラバラの人が集まって行動をしている。そのため、上場会社であろうと、歴史があろうと、疑い、何かあれば訴訟を起こすのが文化である。


その信頼を得るために会社は監査人を決め、会計監査を行ってもらうことで決算書の信頼性を証明している。会計監査とは会社が信頼を得るために必要な投資であるという考え方で、監査人に払う報酬も非常に高い。また、監査人も少しでも疑わしいことがあれば意見を出さない。それで会社が困窮しようと上場廃止になろうと倒産しようと、監査人が意見を変えることはない。


もし妥協をすれば、監査人の責任になるからである。しかし、日本は信頼の文化があり、大企業というだけで信頼され、また、大企業もそのブランド力にあぐらをかく傾向にある。


会計監査に対しても、痛くもない腹をさぐられると抵抗する会社も多く、また、不要なコストだと考える会社が多い。監査意見に対しても、出さないということは基本的には考えられず、また決算早期化などに引きずられ、1週間寝ずに監査を行うというスケジュールの監査人もいるのが日本の実体である。


しかしながら、昨今の不正発覚が相次いでいることにより、会社の態度は変わらないにも関わらず、監査人が行わなければならない監査の内容は膨大に膨れ上がっている。その中でも連結子会社の不正は多いため、今回のような子会社の意見差し控えに対して、親会社監査人が意見を出すということは、親会社監査人の責任になるため、そのようなことはできないのである。


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オピニオンショッピングとそのリスク


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ところで、今回は監査人が意見差し控える「意見不表明」であるが、監査意見には4種類ある。通常の「適正意見」、「限定付適正意見」、「不適正意見」、そして「意見不表明」だ。


今回の背景を考えれば、普通は限定付、または不適正意見になると考えられる。すなわち、ウエスチングハウス関連については適正ではないが、他は適正だという意見である限定付適正意見を出すか、その損失等が決算書全体に及び、決算書自体がもはや適正とはいえないとして不適正意見を出す。意見不表明については、本来は会社が監査に必要な資料の提出などを行わず、監査自体ができなかった場合に意見不表明となるのだ。


恐らく、あらた監査法人は限定付、もしくは不適正と、意見を表明すること自体を嫌がったと思われる。しかし、意見不表明は上場廃止につながるため、東芝はせめて「限定付」の意見を得るため監査法人の変更を検討している。


意見を変えるための監査法人変更は「オピニオンショッピング」と呼ばれ、監査はどの監査人でも意見や質を変えてはならない原則に反することになる。会社の信頼は失墜し、倒産の可能性まで出てくる。ここから東芝がどのように動くのか、監査法人の動向にも注目だ。



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