『グランドフィナーレ』圧倒的な映像美と老年の苦悩に興味がある方に


アルプスのリゾートホテルで繰り広げられる、孤独なセレブ達の苦悩の姿


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 今回は、いわゆるセレブでありながら、どこかに影を背負った人々がスイスはアルプスの高級リゾートホテルで繰り広げる人間ドラマを描いた作品『グランドフィナーレ』を紹介します。


この作品の監督と脚本は、パオロ・ソレンティーノ氏で、主演は名優マイケル・ケインが務めています。テンポの早いハリウッド映画などとは違い、ゆったりとした時間の流れで描かれる人間ドラマですので、映像美を楽しみたいという方や、老年に差し掛かった人間の苦悩について触れたい人などにおすすめする映画です。展開の早い映画や、アクションものが好きだという方の中には、展開が単調に感じる部分もあるかもしれませんのでご注意ください。


 音楽家のフレド(マイケル・ケイン)は、映画監督であり親友のミック(ハーヴェイ・カイテル)と共に、スイスのアルプスにある高級リゾートホテルに長期で滞在し、静養しています。


ミックは、新作映画の撮影に向けて、若き脚本家の卵達と共に映画制作へ向けて仕事をしています。その中で、様々な登場人物が出てきて、彼らの日々を彩ります。ですが、ミックの元にとある女優が訪れ、その女優がミックの映画への出演を拒否したことで・・・。とこれ以上書くと、これから見る方の楽しみを奪いますので、詳細は書きません。


 とにかく、二人とも世間的に大きな成功を収めた人物ということが素直に羨ましいなと思いました。ですが、周りの人間も含めて社会的な成功者でありながら、大きな孤独と向き合わざるを得ないのがとても悲しくて、奥深い物語だと感じました。




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老いたセレブの生き様を通して、青春とは何か・・・と自問自答する


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 本作は、所々にイメージのように象徴的な’老い’や’若さ’に関するシーンが挿入されます。それが結構、老人を風刺しているようにも感じられるし、老人が若さを切望しているようにも思えて、なかなか味わい深いです。


そのあたりの映像美がとても繊細で、小説や演劇には描けない映像作品ならではのシンボリックな場面だと思います。とても絵画的です。要するに、映像美が圧倒的ということは間違い無いと思います。


 また、スイスのアルプスの美しい景色を背景にして、人間が老いていくことと圧倒的な大自然をの対比を感じ、老いとは何だろうか、死とは何だろうか、と考えさせられる、とても哲学的なテーマを持った作品だと感じました。


 そして、ここからは少しネタバレになってしまいますので、これから見る方は読まないほうがいいかもしれませんが、映画監督のミックが女優に映画への出演を拒否され、自害してしまう場面がありました。自らの生きがいや、才能の枯渇と向き合うこと、そして、老人特有の鬱屈した気分から逃れられない場合、こういった事態は起きてしまうのでしょうか。


ミックの死をもって、それまで音楽の舞台に復帰することを拒否していたフレドは、ついに復帰することにします。こういった描写では、映画を見ることで、観客自身が自らの死を出演者に代替してもらっている感覚がしました。


つまり、観客も感じていた’死’への誘惑を、この映画の出演者のミックが実際に行ってしまうことで、観客自身の自死の代替行為になっていると思うのです。そういった面でも、観客はカタルシスを感じることができるのだと思います。自らの死を代替してもらったような感覚を得て、観客は映画館を後にします。


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ハーヴェイ・カイテルは、貫禄があって、魅力的な役者さんです


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 写真は、マイケル・ケインが演じるフレドですが、筆者個人的には、ハーヴェイ・カイテルの演技がとても良いと思いました。ハーヴェイ・カイテル出演の代表作には『ユリシーズの瞳』(テオ・アンゲロプロス監督)や、『タクシードライバー』(マーティン・スコセッシ監督)などがあります。他にも、『レザボア・ドッグス』や『テルマ&ルイーズ』や、『天使にラブ・ソングを…』など、様々なジャンルの作品に出演しているアメリカ人の俳優です。


 ハーヴェイ・カイテルは、一時期、アメリカのハリウッドで監督と意見の相違などで仕事がない時代があったそうです。そのため、彼はヨーロッパでの活動をメインにしていたそうです。


そのお陰でヨーロッパの名作に出演するなどもできたのでしょうが、自らのホームグラウンドで拒絶されるということは、とても苦労があったのだろうと思います。そんな彼だからこそ出来る説得力のある演技があると思います。雰囲気にも、独特の色気があると思いますが、皆さんはどう思われるでしょうか。『ユリシーズの瞳』も大作ですが、カイテルの名演が光った名作です。間違いありません!


まとめ


 今現在、若者であったとしても、生きていれば全ての人が差し掛かるのが老年期です。そういった中で、何を希望にして生きるのか、心の拠り所は何なのか、何を目標にして自らの活動を続けていくのか、などなど生きる上でのテーマがたくさん目の前に浮かび上がってきます。まだ老年期なんて先だわ、という人も、真っ只中だという人も、一度、時間のあるときにゆっくりと見てもらいたいおすすめの映画です。
www.momochakei.com

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